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朝食勉強会

ファッショントレンドはこう作られる

~アパレル業界に代表される日本の流通業界最先端~

2015年10月14日(水)に本年度第1回目の朝食勉強会が、シャングリ・ラ・ホテルにおいて開催されました。今回は、立教大学経営学部教授の高岡先生に、普段の固いお話とは違うファッション業界についてご講演いただきました。

日本におけるファッショントレンドの変遷 1970年代、雑誌「an・an」に代表されるようなニュートラルなファッションや、雑誌「JJ」の鎌倉スタイルといったかわいらしいファッションの時代。

1980年代に入るとオリーブガール、DCブランドブームといったトレンドになる。
1990年代には、渋谷109全盛時代となり、コギャルに代表されるような、スタイルが登場。セレブという言葉もこのころから出始めた。2000年代に入ると、エビちゃん、モエちゃんに代表される、東京ガールズコレクションがスタートして、ミラノ・パリ・ニューヨークコ レクションとは違い、身近にいる女の子が着るようなファッションが注目されるようになった。
近年では、ミクシーやインスタグラムといったSNSの登場と、ユニクロなどに代表されるファストファッションの流れが加わり、よりファッションが身近になっている。

アパレル業界の状況

国内の市場規模はおよそ9兆円。内6兆円が婦人服。アパレルの世界では婦人服が中心になっている。金額ベースで見ると90年代をピークに年々減少しており、洋服が売れなくなっているように見える。しかし、数量ベースで見ると、減少幅は小さい。これは、ファストファッションと呼ばれる、ユニクロや、フォーエバー21の登場で洋服の単価が下がり買いやすい時代になったことを示している。 

流通チャネル

洋服を売る場所のことをアパレル業界では、「館」と呼ぶ。「館」は大きく、百貨店、駅ビル系、ショッピングモール系、路面店、WEBの5つに分類される。アパレル業界勢力図は中長期で見ればどこの館で売っているかで明暗が分かれている。世界的にはZARAが最大で2兆4千億の売上規模。国内最大はユニクロを展開するファーストリテイリングで1兆7千億。ユニクロは20年前には国内トップ10にも入っていなかった。かつての上位企業は、ワールド、オンワード、TSIホールディングスやレナウン、三陽商会など。しかし、百貨店を主要なチャネルとしてこだわりすぎ、駅ビルやモールへの展開が遅れた企業は百貨店と共に、売上が縮小していった。このように、消費者がどこの館で買うのか、メーカーがどこの館で売るのかで大きな差につながった。

館とアパレルメーカーの取引形態

  • 百貨店の取引形態
    百貨店との取引形態は特殊で、商品が1点売れるごとに仕入れが発生し、その際の掛け率で決まっている。つまり、百貨店の店頭に商品が並んでいるあいだは、所有権はメーカーにある。消費者がレジで購入した段階で、所有権がメーカーから百貨店、消費者と瞬時に渡る仕組みになっている。東京都心、大阪環状線内の大手百貨店で、商品価格のおよそ35~45%、地方百貨店で25~40%が百貨店に入る仕組みになっている。因みに、もっとも高いのが伊勢丹新宿店だが、メーカー側としては集客力があるところにお金を払っても置きたいと考えている。
  • 駅ビル、モール系の取引形態
    テナント料として家賃を支払う形態で、館ごとに、フロア、場所による坪当たりの想定売上のおよそ15~20%といわれている。想定売上を超えたら儲かるという仕組みで、売れば売るほど家賃比率が下がるようになっている。よって、テナントは売れないと家賃負担が大きくなり、退店することになるため、常に売上の取れるような斬新なお店が集まる構図になっている。
  • 路面店の形態
    単純に決められた家賃を支払う形態。商業施設ではないので、ブランドイメージに沿った外装、内装が可能。都内で最も高いといわれているのが表参道。メインの通り1階でおよそ坪10万~15万といわれている。おそらく、表参道にあるブランドは相当な家賃を払っており、ほとんど利益が出ていないのではないかと思われる。
  • WEBの形態
    大きく、ZOZOタウンのようなWEB上のアパレルショッピングサイトと、自社で展開するWEBサイトで違ってくる。アパレルショッピングサイトでは、15%程度のマージンが必要な上、在庫管理が行いにくい。その点、自社サイトはシステム開発費と管理費はかかるもののコストが安く在庫管理もしやすいというメリットがあり、各メーカー、ブランド共に力を入れている。

ファッション業界で今起きていること

ファッションのトレンドはこれまでは、コレクションを中心に、国民的女優や、プロのモデル、海外セレブ、読者モデルがそれを着用することでつくりあげてきた。
ここ1・2年の傾向は、雑誌のスタイリスト、フォトグラファーが影響を与えるようになってきている。モデルよりも雑誌で取り上げるようなファッションを扱っている人たちの方が、センスがいいということが一般の消費者に広まっている。これはSNSの影響が大きい。スタイリストの辻直子さんやフォトグラファーのシトウレイさんなどのブログや、インスタグラムに掲載される本人のお勧めコーディネイトがSNSを通じて、一般の消費者に影響を与えるようになってきている。更に最近では、インスタグラムユーザーが広がったことで、世の中に影響を与える人たちが変わりつつある。ものすごい数のフォロアーを持つ一般の消費者が、毎日自分のコーディネイトを、ハッシュタグをつけてアップすることで、かわいいと話題を呼ぶようになっている。こうした一般の消費者から出てきた人たちが、フォロアーである一般の消費者のお買い物に同行をしたり、自宅に行ってクローゼットにあるものからコーディネイトを選んでくれるようなサービスも始めて予約が殺到するような状況になっている。こうした動きに、アパレルメーカーや出版業界などが注目をして、コラボするようになり、本を出版したり、セミナーを開いたりと、これまでのビジネスを大きく変えている。

ファッション業界の今後

イノベーター理論で、ファッションのトレンドを追う人たちを分類すると、イノベーター、オピニオンリーダーと呼ばれるコレクションモデルなどを購入するファッションに敏感な人々がおよそ15%、アーリーマジョリティと呼ばれる早めにファッションに対応する人々が35%、レイトマジョリティと呼ばれる遅めに対応する35%の人々と残りに分類される。メーカー各社はオピニオンリーダーと呼ばれつつある身近なモデル、一般消費者の中から出てきたファッションアイコンの人たちを取り込もうと必死になっている。彼らが自分のインスタグラムで自社の洋服を着てくれることで、これまで百貨店などにいた販売員の代わりとなる。
今後は、アパレルメーカーはますますWEB販売に力を入れていく。そこでは、WEB接客も重要になるだろう。ITベンチャーを活用してSNSと連動した接客、販売をする手法に熱い視線が注がれている。

~講師プロフィール~

高岡美佳 立教大学経営学部教授/博士(経済学)

1999年 東京大学大学院経済学研究科修了
2001年 大阪市立大学経済研究所助教授
2002年 立教大学経済学部助教授
2006年 立教大学経営学部助教授
2007年 同准教授を経て、2009年より現職

小売業・飲食業のフラン チャイズ経営、アパレル企業と百貨店の取引などが専門
株式会社ファミリーマート社外監査役、株式会社モスフードサービス社外取締役
株式会社TSIホー ルディングス(旧東京スタイル、サンエー・インターナショナル)社外取締役などを務める