活動報告

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朝食勉強会

2009年3月18日、帝国ホテルにて藤井清孝氏の講演による朝食勉強会が開催されました。マッキンゼー、ハーバード大学、ウォール街を経て、SAP、ルイ・ヴィトンで日本支社長を務められた、世界と互角にわたりあってきたその経験を語って頂きました。

1 大きな試練の時代

昨今の金融・経済危機のインパクトは極めて大きい。いわば日本の明治維新を世界中で行っている様なもの。米国消費市場の毀損、新興国の成長鈍化、金融市場の収縮、実体経済の悪化と様々な事象が発生している。しかも世界経済の牽引役が見当たらない状態だ。投資銀行が問題の元凶の様な論調を目にすることもあるが、投資銀行は社会にとって必要なものであろう。問題はウォール街から顧客を大事にする概念が消えたことである。高速道路で玉突き事故が起こった時に、高速道路が悪い原因だから失くすべきとの考えは極端であるのと同じと思う。

2 グローバル企業の規模と収益性

グローバル企業の収益率と従業員数を分析すると、従業員数は少なく収益性が高い企業が優れた企業といえるであろう。残念ながら日本の企業は収益性が相対的に低く、従業員数は多い。

3 「横型」アメリカと「縦型」日本

付加価値の高い部分に特化し、それをグローバルに横展開する「横型」モデルを米国は推進している。例えば半導体分野だと自分はシステム設計、回路設計の分野に特化し、チップの製造自体はコストの安いアジアの工場にアウトソースしている。これに対し日本は商品開発、部品調達、生産ラインまで全て自前で行う「縦型」と言える。仮にアジアで生産していてもその工場は自社工場、協力工場であれば縦型の垂直統合の一部といえる。世界の趨勢は「横型」になりつつあるのではないか。

4 強い会社とは

いくつかを挙げるならば、事業フォーカスが明確、お客様に対する価値が明確、強いブランドの力、イノベーションの力、市場創造の力、現場の力、ダイナミックな人材戦略そしてOperationalExcellence(注1)であろう。(注1 決められた事を忠実に行う)

5 ブランドの力を強化

ルイ・ヴィトンがなぜそのブランドを強固に守ってこられたのかを語るならば、

  1. ブランド価値至上主義 (×売上げを優先しアウトレットへの出店)
  2. 価格決定主導権を持つ
  3. 安易なタイアップを行わない
  4. 早急なブランド価値の刈り取りに入らない
  5. 属人的サービスは永続しない
  6. ブランドはお客様への約束であることを認識する

といった事であると思う。ブランドを大事にしていない一例を挙げるならば、航空会社のマイレージプログラムでファーストクラスへのアップグレードといったサービスがある。結果的に正規料金のファーストクラス客は満足せず、ブランドを毀損するのではと思う。

6 イノベーションの力を強化する

オリンピックで有名になった水着のS社は「選手に嫌がられても新しい発想」を採用してお客様をあっと言わせた。日本の某社は選手の着心地を重視して水着を作ったが、顧客の意見を聞くことがイノベーションの力を遠ざける結果になった。

7 正解の無い時代への処方箋

今後日本/日本の企業がどう行動するべきかを述べる。

  1. 政府のリーダーシップ/アポロ計画は月に人が立って何の得があるのか。
    しかし後の技術革新の基となった。経済合理性を超えた方策は政府ならば実現可能。
  2. 自立的資本主義(造語)/国や共同体が自分の面倒を見てくれるハズと思わない。
  3. 愚直なモノ造りだけでは不十分。
  4. 要素技術「環境」「エネルギー」分野は日本が世界でリーダーシップを取れる要素を持っている。
    その要素を組み上げて付加価値の高いビジネスを
  5. 業界単位での競争力強化
  6. イノベーションを起こす力
  7. 「環境」「エネルギー」で日本の競争力活用

質問への回答

「不況はどうやったら抜け出せるか?」に対して

  1. テーマは「環境」「ヘルスケア」
  2. 起業家が活躍する
  3. 産業の転換が必要

「本物のみが生き残る時代に、物事をグローバルに考える力『グローバル・マインド』が日本人には必要不可欠だ」というメッセージを理路整然と語って下さいました。~日本でまだ根付いていない海外のビジネスを日本に紹介して行きたい~ との思いを実践して来られたグローバルな経済人。立教経済人にもその想いは届いたと思います。