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朝食勉強会

2011年第1回朝食勉強会を 10月27日(木)ザ・ペニンシュラ東京「ザ・ギンザボールルーム」にて 開催しました。 講師に池田雄之輔氏(野村證券株式会社金融市場調査部 国際金融為替調査課長 チーフ為替ストラテジスト)をお招きし、「景気後退リスクと主要通貨シナリオ」というテーマでご講演いただきました。

1.為替相場と前提となる世界経済の見方について

今年度末の円相場は1ドル80円を予想しています。アメリカ経済は比較的よいというところを重視し、円が安くなるという表現ではなく、ドルが徐々に持ち直していく姿を描いています。来年度の後半以降により明確な円安ドル高が期待できると考えています。更に円高になって1ドル55円とかになるのではと聞かれますが、ここ1~2年では急激な円高はあり得ないと思います。

2.なぜ、景気が悪いときに限って円高がおきるのか

日本の景気が悪いのに通貨だけが強くなるのはなぜか。その理由は、3つのキーワードがあります。1つ目のキーワードは、日本は、アメリカの景気にかなり頼っている輸出中心の産業構造です。日本から輸出された部品は、最終的にはアメリカの消費者に行き渡っています。日本のアメリカ景気に対する依存度は過去20年間上がってきています。アメリカがGDP1%下がると自動的に0.6%くらい景気が冷えてしまい、日本の景気が連動してしまう。2つ目のキーワードは、日本の金利がほぼゼロであるということも関係しています。3つめのキーワードは、ドル円相場が金利差に動いてしまうこと。この3つの構造が組み合わさると日本の景気が悪い時ほど円高になる構造です。リーマンショック前は、政策金利が5.25%でしたが、あっという間に0%になり量的緩和(QE2)がきている。日本は、どんなに景気が悪くてももともとゼロ金利ですので、追加緩和しても下がる余地がありません。世界景気が悪くなると、必ず日本対他の国とでは、金利差が縮小してしまう。投資家の立場からすると海外の金利があれば、対外投資をすることで円安圧力になります。特に重要なのが、3番目の構造が2005年以降定着してしまったことです。昔は、景気が良い国は通貨高く景気の悪い国は通貨安という構造でしたが、今は金利に通貨が連動しています。米日金利差とドル円相場は、連動しているのです。又実態を伴わない取引が増えてしまっているのも影響しています。

3.円安の兆しが見え、1ドル60円はありえない!

アメリカの金利が上がれば、円安ドル高になるのは当たり前です。米国景気サプライズ指数という毎日の景気指標が市場のコンセンサスに比べて勝率をつけています。勝率が市場見込みより強いと勝率が5割を超えてきています。GDP統計の予想は堅調な伸びで第4四半期も2%は超える予想です。金利がそろそろ上がってもおかしくはない状況ですので、ドルの持ち直し、円安がそろそろ見えてくるでしょう。円相場は日米の金利差に影響するので米国の金利だけを考えればよいです。1%失業率が悪化すると5円位の円高圧力になります。これ以上アメリカの失業率が悪化しなければ1ドル60円になることはないでしょう。

4.円高はどれくらいまで進むのか

1ドル70円を想定していればよいでしょう。円高をあおる為替ストラテジストが多いですが、普通に考えるとないでしょう。投機的ポジションとは、円安を海外の投資家が期待して円を先物で売っているときです。円ロングは、円高を予想して円を買っている残高です。円ショートと思っていると円安であり、円ロングと思っていると円高になっているという関係があります。

5.円高の兆しの法則

ものすごい円高は、1回目はサブプライムショック後、2回目は、第1次ギリシャショック時、3回目は、震災後です。全部に共通していることは、必ず思い切り円ショートから始まり、ゼロにしてから円高圧力がきています。だから今回は、大した円高にはならないと思います。国内の投資家の動きについては、日本の生命保険会社のヘッジの状況は、外貨建て資産を主要9社で保有し、先物を使って外貨を売って、円を買う動きをしているので円高圧力になります。2007年からの2年間は、40%から80%も上がっています。保有資産20兆円からみると8兆円近くが生命保険会社から円買いのオーダーがヘッジを通じてあったことになるのでそれが相当の円高圧力になっています。ここ1~2年は、70円から75円くらいを予想しておけばいいでしょう。

6.為替介入についての法則

財務大臣の口先介入の記録をとり、その後本当に介入があったのかを分析したらすごい法則がありました。たとえば、「円高にはよい面もある」「円高は海外要因による」は介入まで時間がかかり、「市場を注視している」「円高は一方向に偏っている」も意味がない。税務省の主観が入ると、為替介入を正当化しようとしてきます。「ファンダメンタルを反映していない」「円の動きが無秩序である」は、財務省が介入を検討しているのでしょう。「断固たる措置をとる」は海外との調整がなければこの発言はしないと思います。この発言は、月曜日が圧倒的に多いので参考にしてもらいたい。

7.豪ドル円相場の見方について

為替相場は対ドルでやっているのが基本ですが、対米ドルで見ないほうがいいと提言しています。豪ドルを分析する場合は、円と比べて欲しい。日本の場合は、ゼロ金利なので、世界で最後に利上げをするのは日銀と言われています。豪ドル円相場は、オーストラリアの金利を見ていれば間違いないです。オーストラリアは、財政が健全であるので政策金利の見通しが立てられ豪ドル円相場もほぼ予想がつきます。

8.ユーロについてどういうところを注目したらよいか

ユーロも対ドル相場で見るよりも対円相場でみたほうが説明しやすいです。金利とリスクプレミアムを見ると、南欧諸国の予想は難しいです。ユーロの包括的計画はギリシャ支援、銀行の資本増強、欧州安定化基金をどう増やすかの3つですが、ギリシャには触れていません。12月末と3月20日はギリシャの大量国際償還があるので、これまでにお金をいれないとデフォルトになりますが、3月の国際償還にはめどがたっていません。何とか早く合意に至らないと、金融市場の混乱が予測されます。

9.ギリシャ破綻というリスク

ギリシャ破綻がくるとドルの予想さえも危うくなり、株価が世界中で落ちてくる可能性があるのでアメリカの消費マインドも落ちるでしょう。今後のアメリカ経済は、消費動向が重要。欧州情勢は円相場にも影響します。それでも1ドル70円と見ておけば十分です。60円台が定着するということはまずあり得ない。